歯牙移植はむし歯や歯周病、外傷などで失った歯を補う治療法で、ご自身の歯を移植します。生体にやさしく、自然な歯の機能を生かすことのできる治療法です。
歯牙移植とは
歯牙移植とは、むし歯や歯周病、外傷などによって歯を失った場合に、使われていない歯を移植して見た目や機能を回復させる治療方法です。一般的には親知らずや、矯正のために抜歯した健康な歯を使用します。
歯牙移植が可能となる条件
移植する歯に歯根膜があること
歯牙移植で使用される歯は、健康な歯でなければなりません。
健康な歯の歯根部分には歯根膜という組織があり、この歯根膜が骨や細胞の再生に関与します。
歯牙移植後に歯と骨が適切に結合するためには、移植で使用する歯に歯根膜が十分に存在していることが重要になります。
また、移植する歯の歯根の形状が複雑だと、抜歯の際に歯根膜を傷つけるリスクが高くなるため、歯根は単純な形状が望ましいとされています。
移植する歯と移植先のサイズが合致している
移植する歯と移植先の歯や根のサイズが合っていないと、歯牙移植は行えません。
事前にX線撮影やCT撮影などでサイズや形状を確認し、歯牙移植が可能かどうかを診断します。
歯牙移植のメリット
ほかの歯を削らずに済む
失った歯を補う治療方法にはブリッジ治療もありますが、ブリッジ治療では失った歯の両隣を削らなければなりません。
歯牙移植では周囲の歯を削る必要がないため、他の歯に負担をかけにくいといえます。
保険適用となる場合がある
親知らずを移植することや、抜歯した当日に移植することなどの条件を満たしている場合、歯牙移植は保険適用となるケースがあります。
歯牙移植のデメリット
感染や炎症のリスクがある
歯牙移植の手術は外科的な処置を伴うため、感染や歯肉の炎症などのリスクがあります。手術後には抗生物質を服用し、感染のリスクを最小限に抑えます。
骨との結合不良が生じる可能性がある
適切な条件下で行われた歯牙移植は、歯根膜によって骨と歯が適切に結合することが期待できます。
しかし、移植する歯の歯根膜が不十分な場合や移植後の感染により移植された歯が骨と十分に結合しない可能性もあります。
さらに移植後数年経過すると、むし歯や骨との癒着、歯根の吸収などのリスクが生じることもあります。
歯牙移植の治療の流れ
1.カウンセリングと検査
口腔内の診査、X線撮影やCT撮影などの検査を行い、移植する歯や移植先の状態を確認します。
2.治療計画の説明
診査や検査の結果をもとに歯牙移植の治療計画を立てます。手術の流れや注意事項、費用などを説明し、同意が得られたら歯牙移植治療を開始します。
3.手術
局所麻酔を行い、なるべく痛みを感じさせないように移植する歯を慎重に抜歯します。
その後、移植先の骨に穴を開け歯を移植し、ワイヤーなどを用いて固定、歯ぐきを縫合します。
4.手術後
手術翌日〜数日後に消毒を行い、1週間ほどで抜糸します。
その後、移植した歯が感染しないよう神経の治療(根管治療)を行います。根管治療後、痛みや炎症がなければ被せ物を装着します。
歯牙移植後の口腔ケア
日常の口腔ケア
移植後数週間は柔らかい歯ブラシを使用して、やさしくブラッシングをしましょう。
定期的な歯科検診で状態を確認しつつ、徐々に通常の歯ブラシでブラッシングを行うようにします。
食事は硬いものや粘着性のあるものは控えましょう
移植した歯がしっかりと固定するまでは、なるべく柔らかい食事を摂るようにしましょう。
食事の際には移植部分で噛むのを避け、硬い食べものや粘着性のある食べものも控えてください。
定期検診によるメンテナンス
歯牙移植で移植した歯を長持ちさせるためには、定期検診が重要です。
定期検診で移植した歯の状態を確認し、必要に応じて治療やメンテナンスを行います。